シークレット・レース感想。
トピック「最近おもしろかった本」とのことなので乗ってかってみる。
シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)
- 作者: タイラーハミルトン,ダニエルコイル,Tyler Hamilton,Daniel Coyle,児島修
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: 文庫
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面白い…!それはもう噛みしめる勢いで…!
書店員という仕事をしているくせに小説を読むのはあんまりすきじゃないのですが(…)この本は私が苦手な翻訳ものであるにも関わらずグイグイと引き込まれて一気に読んでしまいました。
語彙が少ないので上手に表すことが出来ないのが歯がゆいですが、サイクルロードレースにおけるドーピングというものがピンと来ない方にオススメかなと感じました。
今まで私の中でスポーツにおけるドーピングのイメージは、筋肉増強剤的なものでした。筋肉ムキムキの人がさらに筋肉をつけるために施すもの。砲丸投げとか実際話題になったし、短距離走の某選手とか…。
なのでとても長い距離を何日もかけて走行する、そして細くて華奢な選手達が多い自転車競技にドーピングといってもあまりイメージが湧かず今まではすごくぼんやりとしたものだったのですが、今回この本を読んで目からウロコでした。
本の中でいくつかの薬物について言及されてましたが、単純に言えば辛いのを誤魔化すために使用するってことですよね。心拍数が上がればさらに長い時間、高いレベルのパフォーマンスが出来る。もともと彼らのトレーニングは物凄いものでその上に成り立ってる効果だということが、とても衝撃的でした。ズルしたいから手を出すわけじゃないんだろうな…。
過酷な競技だからこそ当たり前のように蔓延していたし、なかなか根絶が難しいものであるんだろうなあと思いました。
ランス・アームストロング選手のことは名前くらいしか知らなかったので、暴露本と謳ってるこの作品ではさぞ嫌な人間として書かれてるんだろうなあと思っていたのですが、なんだか嫌いになれない人でした。彼がトップにいた間、ドーピングをしていたのは本人も認めたことから事実なんだろうし、ドーピングに関すること以外での彼の描写は確かに傍若無人でおおぅ…となることも多かったけれど、むしろ世界のトップに立つ人の性格が穏やか〜で聖人君子みたいなことはあり得ないと思っているので、逆になんだろう…人間くさく感じたというか。
ああ、ランスさんも異常に自転車で走るのが早いだけで、自分が築き上げたその地位に驕ってしまうくらいには普通の人なんだなとか思ってしまいました…。
タイラー・ハミルトン選手については、記憶力が物凄いなあって思うのと、とても家族想いな方だなあと(小並感) 個人的には1人目の奥様であるヘイブンさんが好きだったのでお別れしてしまったのは少し悲しかったです。大切なひとの秘密を共有して貫き通すのって並大抵のことではないよなあ…。
今後、何度も読み返したい本になりそうです。